菅波栄純のブログ

History of 「運命開花」Part V「歌」の章

History of 「運命開花」Part V「歌」の章

   レコーディングはハードだったが、渾身の楽曲達に命を吹き込む喜びに満ちていた。体力的にはかなり消耗しているはずなのに、全員なんだか明るかった。元気だった。一音ずつ妥協なく積み上げる。その先にたしかに未来がある。目指す音はバックホーンのニュースタンダード。それに向かってまっしぐらに進んでいった。7月中旬にはマスタリングが終わり、四人から吐き出された心のカケラがひとつの音楽になった。 アルバムの根底に流れるのはディープなテーマだ。だけど、完成した音源を改めて聴くと、くそまじめなものじゃない、痛快なロックが奔放に加速していく。そして耳に飛び込んでくる「歌」。岡峰さんが、ある取材の時に言っていた。「バックホーンは山田の歌がもちろん最強の武器です。だけど俺たち、ドラムもベースもギターも歌ってる。そしてライブの時は、客席からの叫び声も笑い声も沈黙も、歌に聴こえるんだよな」。アルバムタイトルは「運命開花」、ツアータイトルは運命を開く歌と書いて「運命開歌」。ロックバンドの帰る場所はライブのステージだ。少し先だけどみなさんと共に歌える日を楽しみにしている。 今になってふと思い出した昔話。メジャーデビューアルバム「人間プログラム」をリリースした時、ネット上で見た書き込みのこと。「メジャーに行ったら音楽性があまりに変わっていて、悲しくてCDを破壊しそうになった」、というものだ。今思えばめちゃくちゃ愛しい書き込みだ。そんなに思い入れてくれたのかと。あいつはいまもロックを聴いているだろうか。これを見てたら新作、ぜひじっくり聴いてみてくれ。俺たち、根っこは変わってないから。 バックホーンらしさとは。それに答える言葉はやっぱりはっきりとはわからない。だけど、その問いかけに全身全霊ぶち当たって生まれたこのアルバムが答えだ。 何を隠そう俺はバックホーンがすきだ。 正直かっこいいと思ってる。 すきなバンドですきなアルバムを作った。 最高の気分だ。 再びこっちから想いをぶつける順番がやってきた。11通目のラブレター。 運命開花、届け!!!!

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History of 「運命開花」Part IV「花」の章

History of 「運命開花」Part IV「花」の章

   岡峰さんの楽曲が今回多彩だ。そして「胡散」の歌詞が新境地だ。TVやネットや町中で日々出会う、胡散臭い出来事や人物。しかしふと鏡を見ると自分が一番胡散臭く感じてくる。ていうか「自分」っていうもの自体本当に存在してるのか、怪しい。脳みそが見せてる幻じゃないのか、、、この情報の洪水のような世の中でカオスになっていく思考回路が見事に描かれている。そう、「カオス」というのもまたバックホーンの大事な一部分だ。そして山田さんの楽曲は今までの作品以上にまっすぐ心に響いてくる。表現者として踏み出そうとする情熱と葛藤。本人はまだまだその渦中だと思っているだろうが(それこそが山田さんだ)今作の前向きさ、力強さの部分を担っているのは山田さんの貢献が大きいと思う。そして松田さんの歌詞、レコーディングが近づいてきてもいっこうに完成してこないのには焦った。もうこれ以上待てないというデッドラインすれすれに寝不足のげっそりした顔で持ってきた「コンクリートに咲いた花」。希望と胸の高鳴りに満ちた光景が描かれている。確実に高揚感があって、一気にメロディーがあふれてきた。それはその夜中にメロディーができなかったらおそらく今作には間に合わないであろうというタイミング。でもメロディーを導いたのは言葉の持つ映像喚起力とマツの「この歌詞で聴いた人の力になりたい」という熱い想いがあったからであろう。最終的にはアルバムを曲順で聞いた時、最初のクライマックスと感じる場面になったのではないか。そうして頼もしい楽曲が集まってきた時、最後の一手が見えた。それは光に伴う影のように「孤独感は人と人の間にこそ生まれる」という部分を描くこと。一体感が生まれていくその片隅で起きる、一つになれなかった出来事。そういうサイドストーリーがあるからこそメインの「色々ある、だけど共に行こう」というメッセージが伝わるのではないか。もうこのへんの制作作業は怒涛すぎて記憶がない。無我夢中で筆をはしらせた。並行してメンバー全員によるアレンジや細部のツメ、練習は進む。 楽曲がそろってきていよいよレコーディングだ、というタイミングになって「イキルサイノウ」のころから音楽を一緒に作ってきたスタッフの戦線離脱が告げられた。もちろん最終的には納得したし、新たな旅立ちを祝ったわけだが、何故このタイミングで、、、という思いでその時はやりきれなくなった。この作品の完成を誰よりも楽しみにして尽力してきた同志。この男のためにも新作は最高傑作にするんだ、という思いを強くした。 心強い人物の合流もあった。「人間プログラム」や「イキルサイノウ」など数々のバックホーン作品を録音してきたエンジニア、林さんだ。ロックのロマンと現代的な音を録る技術を併せ持っている。今回のコンセプトの一つ、「ロマンに満ちていながらモダンでソリッドな音像」を作り上げるのには必要不可欠な人物だった。そのコンセプトを伝えたとき、「大丈夫、まかせとけ」というような言葉をくれて、心底救われた気持ちを覚えている。それを実現するためにレコーディングではかなりヘヴィーな日々が続いたのが。 孤独を描くこと。その上で共に行こうという音を鳴らすこと。それがバックホーンの根っこの部分だろう。寂しさに胸締め付けられる感覚(loneliness)と自らの足でしっかりと立つこと(solitude)の両方が「独り」という言葉には詰まっていて、その間で揺れながら生きるのが人間臭いなあ、と思う。

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History of 「運命開花」Part III 「開」の章

History of 「運命開花」Part III 「開」の章

   「悪人」と「その先へ」は早い段階で原型があり、新譜にとって鍵になると感じていたとPart Iで書いたが、鍵穴を見つけ扉を開くにはかなりの格闘があった。「悪人」は、「あの悪人はきっと僕だ」というフレーズから最後の結末に行き着くまで紆余曲折、試行錯誤、どっぷりと深く入り込む必要があった。この主人公の目には何が映っているのか、何を感じているのか。この時期は道を歩いていてもブツブツ喋っていたと思うし、完全にあぶない人になっていたに違いない。バックホーンがもともと持っていた「罪悪感、悪とは?」という観念的なテーマが、淡い希望と後悔に染まっていく日常的なシーンに繋がった時、「できた、、、」とじわっと、腹の奥から満足感がこみ上げた。「その先へ」はギターリフが最初にあって、めちゃくちゃロックな曲に仕上げたいと思っていたが雰囲気だけのロックな歌詞は書きたくない、じゃあリアルで生々しいのってどういう歌詞だ?とまたもや悩みまくっていた。そんなとき休憩がてら見た、ファンの方の投稿。バックホーンと出会ってもう10年になります、これからも応援してます。お母さんが好きで、その影響でファンになりました。そうだよな、バックホーンの歴史って、ともに歩んできた人たちとの歴史でもあるよなって思った矢先、稲妻のように閃いた。そうか、ロックバンドである自分たちの歩みを自伝として書く。それは自分たちにしかできないじゃないか、と。今まで意識しないように、でもやっぱり気になっていた「初期衝動」という言葉。過去の自分たちの音楽が越えられない壁のように立ちふさがっているような気がする時もあった。でもその歩みがあって今がある。それはこの先へも続いている。そういう歌を作ろうと思えたときバッと目の前が拓けた気がした。自分たちが初期からずっと腹の底に抱いている怪獣のようなイノセンスを、最新型のバックホーンのロックの根底に宿す、重しのように。だけど伝わってくるメッセージは力強く「共に行こう」と呼びかけるものにしよう。そんなアルバムの全体の方向性が見えたのだった。

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History of 「運命開花」Part II 「命」の章

History of 「運命開花」Part II 「命」の章

   バックホーンにしかできない音楽、それをこの時代に鳴らす。ロックへのロマンと、現代的なクオリティを両立させる必要がある。ストレートに言えば「最高にエモいバックホーンらしいロックアルバム」を完成させてええ!と心底思った。昔から応援してくれる人も新たにバックホーンに出会う人もグッとくるものでなければ新たなスタンダードにはなり得ない。時間が無い。僕らは早速、実現するための具体的なやり方を話し合った。今回は楽曲制作のやりとりをファイルとチャットで共有しながら進めていくことになった。今まではそれぞれが家でデモを作り上げて、その音源をスタジオに集まって聴くというものだったが、今回は家での作業から始まるのは一緒だが、曲を作っている課程でどんどんチャットやファイルを送り合ってコミュニケートして、意見を集いながらある程度全員の意向が入ったデモを作り、リハーサルスタジオに集合したときには演奏できる形になっているというものだ。このやり方でいい部分は、早い段階で山さんに仮歌を入れてもらって雰囲気を感じられるというところだ。メロディーやハーモニーを細かい部分まで第一段階のデモの時点で追求できる。やっぱり山さんが歌ったデモがあれば圧倒的に最終形が見えやすい。雑なデモのせいで楽曲の本当の潜在能力を見逃さないためでもあった。 そして作業が始まった。全員自分の曲を作りながらほかのメンバーのデモにも意見やアイデアを出し合っていく。やり始めてすぐ思った。「すげえ忙しい」と。初っぱなからフルスロットルだ。個人的な用事での外出中も連絡が来る。「この時間は返信できません」と立て札を立てて休む必要があった。全員高いモチベーションを保っていたからやり遂げられたようなものだ。それでもレコーディングの期日から考えるとこのペースでギリギリだった。同時に全員がプレイヤーとしての自分にも向き合っていた。もっとバンドに貢献するには?個人のレベルが上がることでバンドにいい影響が出る。それはバックホーン史上最高にクリアーな音質で録音するレコーディング突入時に活きてくるのだがそれはまだ、先の話。怒濤の日々が続いた。「バックホーンらしい」というのを様々な切り口で持ち寄り、構築していった。全員で持ち寄っているからこそのバラエティーだ。これをどうアルバムに落とし込んでいくか。ボツになる曲も出てくる。でもそいつらこそがアルバムを完成へと導き、道を作っていたような気がする。「今回はこの方向ではない」という判断材料が前進するためには必要だから。ボツになるのは悔しいけど。 制作期間中、SNSでファンのみなさんの投稿を読んだり、投稿したりするのが息抜きになっていた。ファンの方がふとアップした「バックホーンに初めて出会ったときの話」とか、別の方がライブを楽しみにしてくれている様子とかそういうのを見て「よっしゃあ」と気合いを入れて音のなかへ再び、潜っていった。

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History of 「運命開花」Part I「運」の章

History of 「運命開花」Part I「運」の章

  前作、暁のファンファーレのツアーはバンドにとって、重要で大きな経験だった。何があっても歩み出して前進していくこと。東日本大震災以降のバックホーンのモード、ポジティブな「粋」であり、「心意気」を全国に届けに行ったツアーだった。今思えば前2作はこの激動の日本で活動するミュージシャンとしての使命をバックホーン流のロックで果たそうというものだった。さて、その暁のツアーも終わり年末に差し迫った頃、三軒茶屋の飲み屋でメンバーミーティングがあった。次回作は「バックホーンにしかできないものに向かおう」と話が出た。バンドの持ち味や武器を再確認し、共有した上で進みたいというものだった。それは前2作がバックホーン個人(?)というより時代や状況という大きな流れの中で生まれてきたことを考えると自然な反動だったと思う。ただ、逆に言えば「一番難解な問いに話を戻す」という意味でもあると思った。セルフタイトルのアルバム以降、それこそ「バックホーンらしさ」というものに全身全霊向き合って数作。バンドがどんどんタフになっていくと同時に「自分で自分を探す」という行為は劇薬のようにいつか体と心を蝕むかもしれない、とも感じていた。そしてその矢先の東日本大震災。自分たちは音楽でなにができるのか、日本のバンドとしての「使命感」を携えて外へと開けていった。一度は「答えのない問題」からある意味解き放たれた(そして新たな自分たちの居場所、存在の仕方の一つを見つけた)場所からもう一度ディープな場所へ向かうというのだから、議論は白熱した。新たな魅力と、初期衝動。情緒と肉体性。前向きさとネガティブな部分。生と死。ほぼ相反するコンセプトの明暗をどちらも「自分たちらしさ」として身につけてきた今、どんな形が正解なのか。最終的にはそのいろんな「バックホーン観」を旗を振ってまとめていく役が必要だと言う話になり、過去の実績(?)や性格が認められたのか、菅波さんに白羽の矢が立った。そのとき「了解です」と二つ返事でOKしたのには実は理由がある。手がかりにすぎない感覚ではあったが自分には次のビジョンがうっすらと見えていた。そのときすでに断片ができていた曲があったのだ。それは、「魂のアリバイ」「悪人」「その先へ」。曲によって歌詞のテーマだけであったり、ギターリフだけだったりしたが、この三曲が新たな「バックホーンにしかできない音楽」への鍵になる予感があった。 飲み会の後、カラオケに行きバックホーンの曲を全員で熱唱したのも、今作の原風景の一部であることを書き加えておく。しかし、この時には想像もできないほどのヘヴィーな制作が待っていることは誰一人知るよしもなかった。

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機材車での過ごし方(DJごっこ編)

機材車での過ごし方(DJごっこ編)

フェスの行き帰り、機材車でのDJタイムの模様をお届けします。 行きの移動中の車内でDJ菅波の登場。プレイリストのテーマは「自分がテンション上がる邦楽」だ! ”ヒゲとボイン/ユニコーン”からの”ヘビーローテーション/AKB48″。 “楽園ベイベー/RIP SLYME”からの”LIFE/キマグレン”。 そして”EZ DO DANCE/TRF”からの”つけまつける/きゃりーぱみゅぱみゅ”。 われながらいいプレイリストだったと自負していると、DJ岡峰の「メタル・ハードロックのアルバムの1曲目」というパンチのあるプレイリストが始まった!自分がキャッチーに感じたのはジャーマンメタルの”ハロウィン/Eagle Fly Free”(実質一曲目)。メロディアスなバンドの1曲目は名曲が多いなあ。サビでバーンと開けてメロが明るくなる曲も多い印象。そこから高速道路を逆走したくなるほどのアッパーな曲が続き、菅波によるエアギター、エアドラム大会が開催された。運転していたローディー大ちゃんのハンドルにも力が入ったことだろう。 帰りの車内ではDJ山田によるプレイ。基本はアルバムまるごとスタイルだ。壮大なサウンドが聞こえてくる。” asobius(アソビウス)”だ。アイスランドのバンドなどをイメージするような透明感のあるボーカル。メロディーがとてもいい日本のバンド。 僕とマツは盛り上がってドラムサウンド談義を始める。アソビウスのバスドラムの音は・・・スネアは歪ませると・・・など、マニアックな話題。そこからいろんなバンドの話題へ。「そういえば”downy(ダウニー)”、再始動したべ!」。この日本が誇るアート/ポストロック・バンドとは、昔対バンしていて格好良い!と盛り上がっていた思い出がある。DJ山田が寡黙なバーのマスターの様に、「ダウニー、あるよ」と言って最新作を流し始める。刺さるようなミニマルサウンドに脳がグラグラになる。さすがだ。 DJ菅波にバトンが渡る。”情熱/UA”や”明日、春が来たら/松たか子”などの名曲を惜しげも無く繰り出し、東京へ到着。最後にマネージャー新川が、不自然な汗を拭きながら「僕、この曲にハマってます」と言って曲を流し始めた。一人の時はエンドレスに聴きすぎて「俺、なにやってんだろ」と自分に呆れることもあるという。確かに名曲だぜ、”乃木坂46/制服のマネキン”!サビの歌詞とメロディー、半端ない。中毒性がすごいわ。僕らは汗を拭きながら語ることも忘れ聴き続けた。 Posted from

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ライブツアーのオフショット作りで活躍したiPhoneアプリ紹介Part1!

ライブツアーのオフショット作りで活躍したiPhoneアプリ紹介Part1!

今回はカメラアプリを紹介したいと思います。それはこちら! HipstamaticHipstamatic, LLC価格: 200円 posted with sticky on 2014.7.15 このアプリはトイカメラ風の写真が撮れます。 こんな写真や こんな感じも! あとで加工するのでなく、撮ったそばからこういう味が出ます。なので、いいニュアンスで撮れるまで気長に楽しんでパシャリとやります。 レンズやフィルムを色々組み合わせて自分好みの設定を作るのも楽しいです。 飽きないアプリですね! HipstamaticHipstamatic, LLC価格: 200円 posted with sticky on 2014.7.15 Posted from するぷろ for iOS.

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